新飛行ルートと便数
政府は、「首都圏空港の機能強化」として、更なる発着回数を拡大する為、羽田空港を発着する航空機を現在の東京湾上空から東京都心上空と川崎区上空の「新飛行ルート」に変更し2020年3月29日から運用が開始されました。
国土交通省によれば、従来の首都圏の離発着回数を8万回増加させ83万回にし、そのうち3.9万回を羽田空港が担うことになります。羽田空港の国際線を1日80便から50便増やし1日130に増便するため国際線のニーズが高い時間帯(15時~19時)間で、南風時に運用され、1時間当たり20便程度とされています。
国土交通省は本格運用開始する前に、実機飛行で騒音測定
測定場所は国立医薬品食品衛生研究所(川崎区殿町)で2020年2月7日に測定した騒音が最大94dbで92db以上の測定時間は約5秒を記録しています。
(参考:一般的な騒音レベル)
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住宅地や石油コンビナート上空の飛行について
南風時・15時~19時間の新飛行ルートは、羽田空港のB滑走路を離陸したのち多摩川を超えて、川崎区の上空300メートルから900メートル上空を飛行します。
川崎区の飛行ルート下には、石油コンビナート・住宅・保育園・学校・病院があり、90dbを越える騒音と健康被害、落下物による人身・家屋の被害、落下物や航空機事故による石油コンビナート火災など周辺地域に新たな危険と負担をもたらします。
石油コンビナートに落下物や航空機事故による火災が発生した場合に、コンビナートに貯蔵されている石油類や可燃性ガスに引火すれば消化活動は不可能とされています。
2011年3月に発生した東日本大震災の際、千葉県市原市でコンビナート火災が発生し、8万5千人に避難勧告が出されました。
航空機事故や航空機部品の落下により、川崎石油コンビナートで、大規模火災が起きればその被害は、川崎区全域と、JR川崎駅を超え幸区の一部や大田区の六郷まで達し①ファイヤーボール(爆発による火の玉)による熱の被害②爆風による被害③爆風による飛散物による被害が想定されています。
50年間守ってきた「臨海工業地帯上空の飛行制限」を破棄した政府と川崎市政の責任が問われています。
川崎石油コンビナート上空の飛行制限と経過について
昭和40年代に空港周辺で発生した航空機事故を契機として、川崎市長、川崎市議会から国にたいして、川崎石油コンビナート地域の航空安全の確保に関する要望を行いました。
1970年11月、国は羽田空港の位置、滑走路の方向等から、川崎石油コンビナート地域上空の飛行を全面的に禁止することは航空機の航行の安全確保等の見地から困難で有る為、出来る限り、当該地域上空の飛行を制限するとし、東京航空局長から東京国際空港長あてに、川崎石油コンビナート地域上空の飛行制限について通知し運用されていました。
飛行制限の内容(1970年11月に出された通知)
〇東京国際空港(羽田空港)に離着陸する航空機は、原則として、川崎石油コンビナート地域上空を避け、適切な飛行コースをとらせること。
〇東京国際空港(羽田空港)に離着陸する航空機以外の航空機は、川崎石油コンビナート地域上空における飛行を避けさせるとともに、やむを得ず上空飛行する必要のある場合は、低高度(3000フィート以下)の飛行は行わせないこと。
飛行制限に対する川崎市の対応(川崎市まちづくり委員会資料より)
〇本市としては、羽田空港の機能強化について、その必要性を認識しているところであるが、騒音・安全対策、地元説明などの新飛行経路の運用に係る必要な対策について、国に対応を求めてきた。
〇この度の本市要望に対して、運用後も含め、適切に対応していくことの国の回答を受けており、この中で石油コンビナート地域の飛行制限の見直しについては、安全運航に必要な措置について、国が責任を持って対応することが示された。
〇そのため、本市としては、それらの必要な対策について、運用後も含め、引き続き国の対応状況を充分確認していく。
「区民の会」の発足経過
川崎区の住民有志により、羽田増便による低空飛行ルートに反対する取り組みが始まり、2018年5月20日「スタート集会」を開催、2019年9月23日に「区民集会」を開き、「川崎区民の会」を発足し2020年7月からJR川崎駅前で毎月宣伝と署名の取り組みを進めています。
「区民の会」は、川崎市に対し、飛行ルートを見直すための請願及び署名活動を行っています。個人による陳情も3件出され「川崎市議会まちづくり」委員会は、「請願・陳情」を継続審査としていましたが、2023年の統一地方選挙に伴い廃案になってしまいました。
私達は、羽田増便による低空飛行ルートの見直しを求め、川崎区の静かで安全な空を取り戻すため皆様のご協力をお願いし、共に粘り強く運動を進めていきたいと考えています。