1.新飛行ルート導入の経過と川崎市の対応

1)新飛行ルート導入の目的
国土交通省は、住民説明会で配布したパンフレットによると、羽田空港の国際線が増便されることでビジネスや旅行の幅が広がり、首都圏だけでなく全国を元気にします。人やモノの流れが活性化され、年間約6503億円の経済波及効果や約4.7万人の雇用増加等が期待できるとし、現在の国際線を1日80便から1日約50便増やし1日130便にするとして、2020年3月29日から運用しました。
新たに導入した飛行経路は国際線のニーズが高い15時~19時の間に運用されます。

N :北風時の飛行経路 運用時間帯 (7時~11時半、15時~19時)
S : 南風時の飛行例路  運用時間帯 (15時~19時)
赤線:到着経路(好天候時) 桃色線:到着経路(悪天候時) 青線:出発経路

飛行ルート図

国土交通省資料から引用(4枚)

羽田空港の滑走路配置図

羽田空港の滑走路配置図

2)新飛行ルートに対する川崎市の対応
川崎石油コンビナート上空の飛行制限は、1970年に金刺不二太郎市長(当時)の要請を受けて薄木正明局長(当時)名で発行されたもので、羽田空港を離陸する航空機に対し「原則として、川崎石油コンビナート地域上空を避ける」よう制限していました。
2019年12月、東京航空局は東京国際空港長と川崎市の福田紀彦市長宛に、川崎石油コンビナート上空の飛行制限を廃止する通知を行いました。

川崎市の見解
本市としては、羽田空港の機能強化について、その必要性を認識しているところであるが、騒音・安全対策、地元説明などの新飛行経路の運用に係る必要な対策について、国に対応を求めてきた。
このたびの本市要望に対して、運用後も含め、適切に対応していくことの国の回答を受けており、この中で石油コンビナート地域の飛行制限の見直しについては、安全運航に必要な措置について、国が責任を持って対応することが示された。
そのため、本市としては、それらの必要な対策について、運用後も含め引き続き国の対応状況を十分確認していく。

3)子供の声「市長への手紙」にどう向き合うか
飛行ルート直下の住宅地の子どもが「新飛行ルートは中止してください」という「市長への手紙」を出しています。今、私たち大人は子どもたちの意見や声にどう向き合っていくのか責任が問われています。
佐々木勝男さん(元小学校教員)に『子どもの権利はいかに確立してきたか』というテーマで話して頂きました。その要約を紹介します。

写真 故 佐々木勝男

故 佐々木勝男先生

20世紀に入って「子どもの権利条約」(1989年)が国連総会で採択され、子供の意見表明権、社会参加権を大胆に認める新しい子ども権が宣言されました。日本は1994年に批准しています。中米の小さい国コスタリカでは、「子どもの訴え」が制度として保障されています。

川崎市「子どもの権利に関する条例」は2000年12月21日、市議会で成立し翌年4月1日から施行されています。多くの市民や子どもたちの声でつくられました。(18歳未満が子どもです)。

写真 殿町第二公園の上空を飛行

川崎区 殿町第二公園の上空が飛行ルートに

この条例は7つの柱にまとめられ、1番目に「安心して生きる権利」があり「子どもは、愛情と理解をもって育てられ、あらゆる差別や暴力を受けず、平和と安全な環境のもとで生活することが出来る」ことが保障されています。
「子どもの権利条例」は、国連総会で採択された「子どもの権利条約」に沿って制定されたものです。
子どもたちはどう受け止めたか?「権利をもらえるのはうれしいけど、それを大人の人たちが、ほんとうに守ってくれたならもっとうれしい。本当にやってくれるのか心配です」という感想が返ってきました。大人たちの責任が問われています。子どもたちの声を行政に届けましょう。

川崎市子どもの権利に関する条例パンフレットより抜粋
①安心して生きる権利 ②ありのままの自分でいる権利 ③自分を守り、守られる権利 ④自分を豊かにし、力づけられる権利 ⑤自分で決める権利 ⑥参加する権利 ⑦個別の必要に応じて支援を受ける権利