6.石油化学コンビナートで火災発生した場合の被害は

川崎臨海石油コンビナート区域マップ

川崎臨海石油コンビナート区域(赤塗)川崎市パンフレットから引用

1)川崎臨海部の石油化学コンビナート
川崎臨海部の石油化学コンビナートには、大量の危険物と毒性物質が貯蔵され、企業内及び各企業間の施設はパイプラインで繋がれており、可燃性ガスや毒性ガスが流れ、その原料となる原油やナフサ、LNGといった可燃性液体やガスが貯蔵されています。

2)消火できない化学物質も存在
(1)
ナフサは粗製ガソリンと言われ火災が発生したら現在の消防力では消火できません。貯蔵タンクには、それぞれ冷却装置を取り付けていますが、火災発生時は隣接するタンクに移し自然消化を待つしかありません。
 (2)LNG(液化天然ガス)は約マイナス200℃で貯蔵されていますが、全電源が失われた場合は冷却装置が作動しなくなり可燃ガスとして大気に放出しなければなりません。
 (3)エチレン(マイナス100℃)、プロピレン(マイナス70℃)、プラスチックの原料は極低温で貯蔵されています。
 (4)塩素ガス、硫化水素ガスや酸化エチレン等、製造過程で発生するガスは毒性が強いものです。

川崎石油コンビナートの写真

川崎石油コンビナート工場

3)石油化学コンビナートで火災が発生すれば大惨事に
川崎臨海部コンビナートの真上で航空機や落下物事故などが起きたら、すぐに大惨事に直結します。川崎市議会で「事故が起きたらどうなる?」の質問に消防局長は「危険物施設等の火災や破壊、危険物漏洩、墜落の場合は複合災害に進展し多数の死傷者の発生が危惧される」と答えています。                  川崎市の臨海部防災対策計画によると、最大規模の災害が発生した場合、川崎区全体と幸区の一部まで最大約27万人が屋内避難の対象になり、それは、放射熱、爆風の風圧、破片の飛散がそこまで及ぶことが想定されています(片柳進市議HPから引用)。
神奈川県石油コンビナート等防災計画では、石油類の流出が事業所外へ拡大し、石油類や可燃性ガスの火災・爆発が隣接施設にも拡大するような災害(大規模災害)が起きた場合、被害の影響範囲は2000メートルに達し産業道路より海側地域は全て含まれ、産業道路北側では、東門前、台町、四谷上町、大師、藤崎、桜本、大島、鋼管道り、浜町、小田地域に被害が及ぶと考えられています。

石油コンビナートと飛行ルートの写真

石油コンビナートと飛行ルート

4)航空機事故が起きた場合の「被害想定は」
川崎市の「臨海部防災対策計画」では、もし大地震により石油コンビナートが大爆発事故を起こしたら、どこの地域が「屋内避難」となり、何万人が避難対象になる等、具体的に示しています。
一方、航空機の墜落や落下物などによる事故が発生した場合の「被害想定」について国は全く示していません。
国と県、市は協力して、地元住民やコンビナートで働く人たちの命と安全を守るために、急いで被害想定および避難ルートや方法について住民に示すべきではないでしょうか。 

5)世界に類のない危険な飛行ルート
2020年2月の衆院予算委員会で、「諸外国で離陸直後に石油コンビナート上空を飛行するルートはあるのか」と追求した畑野君枝議員の質問に、運輸省航空局はオランダのロッテルダム空港を例示したものの、経路下にはあるが離陸直後ではないことを認めました。離陸直後に石油コンビナート上空を飛行するルートは、羽田空港以外、世界の何処にもないのです。

川崎区上空の飛行ルート図

川崎区上空の飛行ルート図 国土交通省資料から引用