7. 国の言う「固定化回避」とは何か みなとの空を守る会主催 杉江弘氏の講演 

写真 元日本航空機長 杉江 弘

元日本航空機長 杉江 弘

1)国の言う「固定化回避」とはなにか
東京都港区で活動されている「みなとの空を守る会」主催で、2021年11月30日、元日本航空機長の杉江弘氏の講演がありました。
新飛行ルートが2020年3月29日から運用された後、自治体や住民から新飛行ルートの見直しを求める声の広がりを反映してか、運輸省は固定化回避の検討会を立ち上げました。               第4回検討会(2021年8月)は「羽田空港への導入可能性のある飛行方式」として二つの案に絞って提示しました。この提案は、滑走路A及びCに同時に着陸することを前提に、かつ東京湾に沿って飛行するルートで都心の騒音を回避するのが目的です。
①案は、日本では松本空港が採用している進入方式で空港近隣の山を回避する為に採用されたルートで小型の航空機に限定されています。大型機の場合、滑走路進入時の直線必要距離は小型機の約2~3倍必要とされる為です。
羽田空港で①案の進入方式を運用した場合、滑走路A及びCに進入する航空機間の水平距離の他、高度差は最低300メートル以上必要とされ、上方から進入する場合は急角度になり危険な着陸になります。
②案は、現在でも使用されている進入方式で好天の時だけ運用されています。2機同時着陸は①案と同様に危険な着陸になり運用は不可能と言えます。
検討会名に「羽田新経路の固定化回避」と付けられていますが、実は新ルートそのものを見直すことは対象とされていません。国にも確認したところ「新ルートが前提であり、見直し対象ではない」と明確に回答しました。新ルートには一切手を付けないのです。

①RNP-ARは、衛星からの信号を元に航空機に搭載されているコンピューターが描いたルートに従い飛行する進入方式です。
②RNP-WPは、衛星からの信号による経路を飛行したのちに滑走路を視認できれば滑走路への進入を目視により操縦する方式です。 
国土交通省が提示した導入可能性のある飛行方式

国土交通省資料から引用

2)着陸時の「横風ヒヤリ」、風向きに応じて柔軟な対応を
東京都心を低空で着陸する新飛行ルートで、航空事故に繋がりかねない事例が、10件寄せられるのは異例なことです。「航空安全情報自発報告制度」に寄せられた報告では、都心ルート運用時の横風や急な降下角度について、安全性を懸念する声が相次いでいる。南西の風が多い羽田空港に着陸する際、従来の千葉県側からのルートでは「向かい風」になるが新ルートでは南南東に降下する為「横風」になり「あまり経験したことのない揺れを経験した」「着陸をやり直しても、同じ条件で進入せざるを得ない」等の声が寄せられている。あえて横風で不利な進入をするよりも、風向きの状況に応じて、安全に運航できるように柔軟に対応することを要望している。