羽田空港の「B滑走路」を離陸すると、すぐに多摩川河口干潟があります。ここは環境省の「日本重要湿地500」及び「モニタリングサイト1000事業」における鳥類調査地に、更に国土交通省が策定した多摩川水系整備計画でも「生態系保持空間」に位置づけられ、多くの野鳥が生息しています。
日本野鳥の会神奈川支部の会員によれば、多摩川の河口干潟は、日本を代表する湿地環境(ウェットランド)の一つで、この干潟は、遠くアラスカやオセアニアまで旅をする休息地となっています。渡り鳥にとって自然のつながりを守ることでもあります。河口干潟上空の騒音が渡り鳥に与える影響が気がかりです
野鳥の生息地では、飛行機の着陸進入や離陸滑走・上昇中にバードストライクに遭遇した事例が多数報告されています。
国土交通省の調べによると、羽田空港では2019年は165件、2020年には94件発生しており、他の空港と比較すると最も多くバードストライクが発生している空港です。
羽田空港上空で発生したバードストライクによる近年の事故例は、2020年8月29日、羽田空港を離陸したスカイマーク機が、高度3300メートル付近を上昇中に鳥と衝突し、胴体左側の外板にくぼみと内部構造部材が損傷する事例が発生しました。航空局は機体の損傷状況を確認し航空事故に認定しました。
海外でのバードストライクによる航空事故として、イーストウッド監督が映画化した『ハドソン川の奇跡』は知られているところです。2009年ニューヨーク・マンハッタン上空1000メートルでバードストライクに遭遇し、両エンジンが停止し制御不能となった飛行機をハドソン川に不時着させ、乗員・乗客155名全員が生存した航空事故です。
更に『ウラル航空不時着事故』は、2019年8月14日、ジュコーフスキー空港(モスクワ郊外)を離陸した直後、バードストライクに遭遇し両エンジンが停止し機体は空港付近のトウモロコシ畑に不時着した。子供9人を含む74人が負傷したが、乗員乗客233人に死亡者はなかった。この事故は、ハドソン川の事故に類似するところがあり、『トウモロコシ畑の奇跡』と云われている。